第二回フラメンコWeb フェスティバル 全ビデオ紹介/感想コメント

前回の44名に続いて今回も37人の方がエントリーしました。

 フラメンコWebフェスティバルは、各自が投稿したフラメンコのパフォーマンスを、ウエブ上で観た一般の人たちが、気に入ったものに投票するというもの。専門家などによる審査員の審査によって賞が決まるコンクールとは全く違う、新しい形のフェスティバルです。各賞受賞などはこちらの記事をご参照いただくとして、ここでは、志風の各ビデオに対する個人的な感想を述べていこうと思います。

 今まで当たり前のように行き来していたスペインにも行けない、スペインからのアーティストもやってこない。ライブもクラスも中止になったり、オンラインになったり。それに加えて仕事や日々の生活でも大変な思いをしている人も多いことでしょう。でもそんな中でも、みんな、それぞれにフラメンコを楽しんでいる、ってすごくないですか? プロもセミプロもアマチュアも、発祥の地スペインからは遠く離れていても、みんなフラメンコが好きで、それぞれがそれぞれのやり方でフラメンコで表現しているって、本当に素晴らしいことだと思います。

 今回は前回よりも条件が緩和されているので、カメラアングルや編集など、動画のテクニックも色々工夫されている方もいて、よりバラエティにとんだ、楽しい試みがいっぱいで見飽きることがありませんでした。

 それでは前回同様、全ての参加ビデオをご紹介していきましょう。なお、感想はあくまでも志風個人のものです。勝手な呟きで失礼します。なお、参加者の名前曲名等はYouTubeにならい、敬称は略させていただきます。

 

No.1 矢野吉峰フラメンコスタジオ/ /群舞「Guajira」

アバニコを使ってのグアヒーラ、お揃いの薄いピンクのマスクでの群舞。白いブラウスに華やかなスカート。アバニコは大きなペリコン。テーブルの上にあるアバニコをそっと手に取る導入部から足のアップへといく導入部からおしゃれです。スタジオかな、舞台ほどには広くないスペースなんだけど、ソロ、デュオ、ソロ、トリオとフォーメーションも変えながら、そしてカメラのアングルも変えながら進んでいきます。舞踊としても舞踊ビデオとしてもクオリティの非常に高い作品だと思います。バイオリンによる音楽も素晴らしいですね。ちょっと、セビージャのギタリスト、ラファエル・リケーニの曲calle de infiernoを思い出させます。発表会的な意味合いなんでしょうけれど、それ以上のものでありますね。ぜひ舞台でも披露してくださいませ。なお、アバニコは踊る空間の大きさと衣装に合わせて小さめのでも良かったかも。1回目から2度続けてみちゃいました。何度見ても飽きません。ピンクのマスクも真似したいくらい可愛いです。

No.2 松本真理子 ラ・カンパニージャ舞踊団(井田泰子、湯浅万里奈)/Compañía Mari la campanilla/水の行く道 El Canal / 平松加奈

続くこちらもバイオリンの音楽です。野外の公園のようなところとスタジオ?のようなところで白い衣装で踊る二人。フラメンコでは男女で踊ることはよくありますが、女性二人というのは全くないわけではないですが、多少めずらしいかもですね。場所を変えて、アングルをかえて、また編集にも色々工夫をしています。野外は床や照明など、万全なコンディションではなく大変だったのではと思うのですが、がんばってますね。流れるような曲にぴったりの、流れるような振付です。スカートを放り投げるような使い方なども面白いですね。

No.3 山田 あかり/ダビ・ラゴス監修によるミロンガ コン ヒナマツリ/ミロンガ コン ヒナマツリ

実力派カンタオーラの登場です。これはcdのプロモーション・ビデオなのでしょうか。スペインでいうプレイバック、すなわち録音した音源に合わせて撮影した、いわゆる口パクのようです。これ合わせるのはとても難しいのですよね。サウラの映画『フラメンコ』も歌が基本別録音だったのでよく見ると合わない人とかいるんですよね。フラメンコは一般の歌よりも難しいのではないでしょうか。童謡のひな祭りとミロンガの曲調が似ているって、ほんとよく気が付きましたね。面白いなあ。こういうのって他にもありますよね、そういえば竿竹うりや金魚売り、焼き芋などは日本版プレゴンだって、言っていたような。スペイン語とその訳の字幕をつけるというのはカンテ普及のためにもとてもいいですね。スタジオ?撮影の映像だけでなく、海辺での映像を持ってくることで、変化が出ているのもいいと思います。

No.4 荒濱早絵/Calma 空と海と太陽と/Las migas「Calma」

前回の優勝者さん。海辺で、赤い衣装で裸足で踊ります。夕暮れの空の光はとても綺麗なのだけど、その分、逆光で顔が影になっているのはしょうがないけれどちょっと悔しいかも。それでもいい表情をして踊ってるのは伝わります。だからこそもっと顔が見たくなる。でもこれ、照明で当てたら雰囲気壊れるし、これが正解なんだろうな。沈み行く夕陽のタイミングに合わせての、一発どりですよね? すごいなあ。ただ、こういう振りだったら、衣装、多分ストレッチ素材で腰のところがピッタリしてるやつのようだけど、そうじゃないものの方が、足動かした時にスカートにもっと動きが出てもっと雰囲気が出てより素敵だったかもしれないなあ、とも思っちゃいました。とにかく、踊り手さんの持っている雰囲気が素敵なので、この調子でどんどん伸びていって欲しいです。曲のセレクションもいいですね。いつか舞台も見たいなあ。

No.5 塩谷経/甥っ子達よ、元気か?/グアヒーラ・グアヒーラ(仮)(ショートバージョン)

ギターソロ。コンパスはリズムマシーン?なのかな。とても上手な方です。第1回のフェスティバルの時はそれが決まりだったように固定カメラで撮影しています。演奏は繊細で柔らかな雰囲気。こまやかに音を並べていくという感じ。最後のすっと抜いた感じのところが本当にすごくいいので、ああいう感じのを途中にうまくはさむような構成もいいだろうなあ、と思ったりもしました。ピックアップマイクで音もきれいですね。

No.6 日下 ゆみ/ソレア・リマインド廻炎/ソレア

ソレア。こちらも第1回フェスティバルの時のような固定カメラでの映像です。とても真面目、真摯に、丁寧に踊っています。衣装も黒の、長いフレコの美しいマントンシージョをプラスすることで、ソレアらしい雰囲気を作ることに成功していると思います。表情もソレアを意識していて、本当に一生懸命に踊っているのが伝わります。時間制限のためでしょうか、編集している最後のブレリアはちょっと編集ではっしょっているのかな。ちょっともったいなかったかも。ここまできたらちゃんと見たいと思いますよね。続きはステージで、でしょうか。

No.7 Los pétalos de rosa/Virtual Flamenco 再会/Tango de virtual

薔薇の花びら、という意味のスペイン語の名前を持つグループでの参加です。白黒のビデオで、とても雰囲気がありますね。リモートで6人?ということで、編集を工夫しています。みんな思い思いの稽古着で、それぞれがそれぞれの場所で踊ります。あ、二人は同じところかな? オープニングは同じ振りで始まり、その後はそれぞれの気持ちのまま?、好き好きに踊ります。今という時ならではのビデオではないでしょうか。試みとしてとても面白いと思います。一緒にいなくても繋がっている、という気持ちがいいですね。仲間となら、リモートで空間も時間も超えて繋がることもできるけれど、もしもまた一緒に一堂に会することができたなら、どんなにいいでしょう。ドキドキしますね。

No.8 富松真佑子他(カンテ森薫里、ギター中川浩之、ピアノ野口杏里)/舞踊団公演~六条御息所と葵上~/El vito

大きな劇場での公演なのでしょうか、間口の広い、大きな舞台に黒いマントを羽織った揃いの衣装で、大勢でいっせいにカスタネットを打っての群舞で始まり、そこから紫と青の衣装の二人の女性が対峙するデュオでの踊りへと変わります。曲はスペイン、それもアンダルシアなら誰もが口ずさめる大変ポピュラーなアンダルシアの民謡エル・ビート。タイトルからして、源氏物語の一場面のようですが、でもなぜこの場面でエル・ビートなんでしょうという素朴な疑問。エル・ビートってのんびりした田舎びた雰囲気のある曲じゃないかな、と思っていたのですが、日本で聞くと悲劇的に聞こえるのかもしれませんね。日本語の歌詞を載せているのは面白い試みで、ポピュラーソングでたくさんの歌詞があるせいか、違和感がなく出来上がっている感じがします。

No.9 石沢ふゆこ/匍匐(ほふく)でも前進/Rondeña(ロンデーニャ)

配信のためのライブの録画ということですが、バックにマントンを飾ったりの工夫がいいですね。マントンは小物として使って踊るだけでなく、衣装になったり、このように装飾としてフラメンコの雰囲気作りもできる優れものなのであります。マントンを飾る、それだけでタブラオのような雰囲気が出てきます。踊りは真摯な姿勢に好感が持てます。ロンデーニャはマラガ県ロンダのファンダンゴなので、山娘風を意識したようなシンプルなデザインの衣装なのかもしれません。曲の特徴を知ると衣装も決まってロンデーニャの特徴であるアクセントをオーバー目に意識することでもっとロンデーニャらしくなるかもですね。

No.10 ドミンゴ/舞踊団公演「君を追いゆく薄月夜」より『頭中将』/ガロティン

和物。8と同じ作品の劇場公演のようですね。群舞が傘をくるくる回したり、閉じたり、上下させたりと、色々な動きを出して小物に使っているのはとても面白いですね。フラメンコで傘とい、グアヒーラで、植民地風の雰囲気出すのにちょっと使ったりしたのは見たことありますが、こんな風に使うのを見たのは初めてかもしれません。大変オリジナリティがありますね。大きい舞台でも効果的だと思います。最後が特に楽しそうでいい雰囲気です。

No.11 吉村優子/風 〜kaze〜/rumba Cavatina

雪の竹林。雪の野、緑の竹、差し込む光。そしてそこに舞う赤いマントン。ドローンを使って撮影した画像はとてもダイナミックです。白い雪に赤いマントンのフレコが描く弧の美しさ。ギター演奏も美しく、いろいろ考えて作られた芸術的な作品ですね。曲名はルンバ・カバティーナとありますが、曲種的にはサパテアードのアイレのように感じます。

No.12 佐藤真理/Sol,mar y flamenco ~Sevillanas en Okinawa~/por la bahía

とても綺麗な沖縄の海をバックに、浜辺で、ゆっくりしたセビジャーナスを、アバニコやマントンで変化をつけて踊ります。波打ち際で足を水につけて踊ったり、ビデオならではの試みですね。逆光でのマントンの映像がとても綺麗です。編集できちんと曲と振りを合わせてるのもいいですね。

No.13 PeñaFlamenca ぐるぐる/Compásの渦・ぐるぐる・仲間たち/Bulería

スタジオでの練習や東京、高円寺のタブラオ、カサ・デ・エスペランサの舞台での準備風景などの映像に、グループでのパルマの音を合わせたもの。おそらく性別も年代も職業も違うだろう人たちが集まってパルマでコンパスを作っていくのを楽しんでいるという感じ。そうだよね、フラメンコ楽しいよね。みんなでやればもっと楽しいよね。真面目に頑張って楽しもうという姿勢、素晴らしいですね。話になって回りながら打つのは怪しい宗教みたい?うん、フラメンコは宗教、って思うくらい、人生のベースになっていますよね。きっと。舞台の上で鏡見て足踏んでみたり、いいなあ、みんなでがんばろう。

No.14 タマラ・ラボ/プロローグ/Bulería

まずは先生。それに続いて生徒たち、そして生徒と一緒に先生も。緊張しているのか最初表情が硬い人もいれば、おっと思うようなフラメンコな雰囲気をチラッと見せる人もいたり。ほんと、目線だけでも、ほんのちょっとした首の傾げ方などでもフラメンコって表現できるんだなあって思います。それぞれがそれぞれのアプローチで、でも真剣にフラメンコに取り組んでいる、という感じ。いいですいいです。黒のバックに全員黒い衣装でスタイリッシュ、そして時々はさまれる赤い壁がまたオシャレ。照明も綺麗で良かったです。

No.15 Keiko Kobayashi/Guajira/Guajiras de Natalia Marin

照明の色を変えて雰囲気を変えていますが、 たぶん6の人と同じ場所/セットですね。大きなアバニコを操ってのグアヒーラ。ゆったりと気持ち良さそうに踊っています。にこやかな表情もいいけれど、例えば上体をグッとそらすとか、重心を変えてみるなど体づかいを工夫してみればもっと踊りに幅が出てくるようにも思います。最後歌がちょん切れちゃってるように聞こえるのはどうしたんでしょう。元の録音がそうなのかな?

No.16 相坂直美(あいさかなおみ)/Mi primera bata de cola(初めてのバタデコーラ)/Alegrías

ロックダウンなどもあったこの1年、スペインにとどまって留学頑張ってきたのがまずすごいです。クラスを受けることができずにあせっていた時もあったでしょうけれど、通常よりも生徒が少なく、先生の目が細部にまで行き届く今は、反対にチャンスなのかもしれません。場所はセビージャのスペイン広場かな。生の歌、生のギターでの伴奏というのもスペインらしく、贅沢でいいですね。彼らも留学生ということですがみんなレベル高いですね。そして主人公である踊り手もこの1年で確実に上達しているのではないでしょうか。勢いがあります。初めてのバタということですが、もうほんの少し短めで布地に張りがあったら、もっと習ってきた技が生きるのではないでしょうか。スカートにのり付けするとかするか、下に張りのある布地のカンカンつけるとか、なのかなあ。

No.17 池川寿一/「明日があるさ」をフラメンコでやってみた/明日があるさ(坂本九)

世の中のすべてのフラメンコを愛する人たちへの応援歌ですね。とにかくみんなとても楽しそう。ユーモアいっぱいだし、歌詞がいいです。フラメンコ勉強している人は身につまされることが多いのではないですか? ビデオも手作り風であったかい。いろんな人が日本のあちこちで、いろんな風にフラメンコを愛して、フラメンコ、がんばっているんだなあ、と胸が熱くなります。こんなビデオ見たら私もちょっとかじってみようかしら、と思う人も増えるのではないかしらん。おすすめ。

No.18 山崎双葉/雪山の上で踊ってみた/ソレアポルブレリア

広い野っ原に雪の山を作って、その上に上がり、小さな雪だるまの横でサパテアード。でも音はありません。フラメンコというと普通は激しく鳴らされる靴音や歌、ギターを思い浮かべるところ、音のないフラメンコ、というこのビデオは実に面白いと思います。発想の転換。でも見ているとなんとなく音が聞こえてくるような気がするんですよね。リズムが聴こえる。いいなあ。。最後のオチ?も面白い。好きだなあ。

No.19 カンテさいとうさゆり・バイオリン二上公臣・ギター北村海人/Bésame mucho -Bulería-/Bésame mucho

ラテンのスタンダードナンバー、べサメ・ムーチョをブレリアのリズムで歌っています。今回も歌やギターの人たちも生演奏で一緒に参加してくれているのがうれしいですね。歌い手の方は声がちゃんと前に出ているのがいいです。声を前に押し出すだけでも案外難しいのですよ。ギターの他にバイオリンでも伴奏。今回、バイオリン多いですよね。

No.20 東郷恵子/自宅で歌うフラメンコ/Fandango de Huelva

こちらもカンテ。全身全霊で歌い上げているファンダンゴです。1個前の人が都会派とすると、こっちは土の香がするような感じ。すごく気持ちがこもっていて、伝わってくるものがあるような。歌詞をスペイン語と日本語訳で載せているのもいいですね。その気になる、って、とても大切。歌に気持ちをちゃんと載せている、という感じがします。

No.21 川嶋沙瑛子/Bailando y tocando por Guajiras/Guajiras

一つ一つのふりを丁寧に踊ろうとしているように見受けられます。踊りの後半に見せる笑顔もいいですね。その場がパッと明るくなるようです。音楽の音がとても小さいのはビデオ撮影時の設定の問題でしょうか。もう少し大きい音だと見ている方も助かりますが、スタジオにある設備を利用しての結果だとしたら仕方ないですよね。グアヒーラという曲の起源や歴史、その曲が持つキャラクターを学んでみることも踊る時にはプラスになるのではないかと思います。白いカスタネット、素敵ですね。ただ、真正面じゃなくて斜めに構えた方がもっと綺麗に見えると思います。

No.22 Andy Ido/新学期/Caracoles

桜の花の下、バックで子供が遊んでいる。マイクの風防もなく、風の音が大きくて肝心のギターがあまり聞こえないのだけれど、反対にその場の雰囲気がよく伝わってきます。。ピックアップマイクがあるといいのかな。ギターをいつくしむように一生懸命弾いています。日常の中のフラメンコという感じがとてもいいと思います。

No.23 後藤 晃/後藤晃オリジナルファルセータ集01/グアヒーラ+ブレリア+タンゴ(ポル・アリーバ)+ブレリア(ポル・アリーバ)

オリジナルのファルセータ集。ファルセータとはギターで踊りや歌の伴奏をしているときのソロの部分というとわかりやすいでしょうか。いわば主役を立てて一歩下がった伴奏ではなく自分が主役になる部分でもあります。ソロ演奏をあまり行わないギタリストでも自分のファルセータは持っています。誰かの曲のアレンジだったり、オリジナルだったり、と。きっと普段から自宅?で録音録画をしているのでしょうね、慣れた感じでこなすファルセータ集。余裕で演奏しているという感じ。オリジナルのメロディもいいですね。こんな風に引けたら楽しいだろうな、と聞く人、見る人に思わせる自由な感じが魅力です。

No.24 3時のtres bailaoras (川崎晃子・鈴木旗江・松永郁子)/bulerías/bulerías

白黒の画面で、机叩いてコンパスをとる3人の女性。おっと思わせるオープニング。3時? カラーになると黄赤青、信号機カラーの衣装の3人が踊ります。マスクをしての激しい踊り!いずれも相当の実力者。が突如、そこで始まるあっはーん!!! いやあ、なるほど、お笑いタレント、3時のヒロインへのオマージュ(というのかしらん)なのね。フラメンコはヒターノの苦難の歴史とかもいうけれど、いやいや嘆き節だけじゃありません。ユーモアもフラメンコの大切な要素の一つ。みてるこちらももちろんだけど、やっている方も楽しそうで何よりです。そう、フラメンコは楽しい! 最後のメイキング みたいな付録もまるです。いやあ、これシリーズになります?

No.25 永田健/In My Spirit/In My Spirit

名画をバックに椅子に座ってサパテアード。伸ばした足のラインがなんと美しいのでしょう。これ、いろんなもの見てちゃんと研究してるからこそできるのではないかと思うのであります。カメラがひくと、和風テイストの大広間の四方に名画がかかっていて、その中心に置かれた赤いテーブルの上にコンパネなんですね。舞台設定からして只者じゃない感満載。フラメンコ曲じゃない曲でフラメンコのテクニックで踊るけど、俺が踊ればフラメンコ。編集もご自分ということですが玄人並みだし、踊りの形、特にきめのポーズを大切にしているような美しさ。何度も見たくなります。ファン多いんじゃないでしょうか?

No.26 踊る喋り屋・凌木智里/¡Vámono pa’ Caí!/Tanguillo de Cadiz

カディスの写真と波音をバックにタンギージョの定番『ドゥーロス・アンティーグオス/昔の銅貨』の歌詞の内容を語ります。落ち着いた声で、まるで絵本を朗読しているような感じ。フラメンコへのこれまでにないアプローチですね。フラメンコの歌詞にインスパイアされた絵本、とか、できそうな気がしてきました。写真も静止画に動きをつけて、飽きないようにと工夫されています。うん、フラメンコ、いろんな可能性がありますね。

No.27 本間静香/HIKARI ~La luz de la Esperanza~(希望の光)/ブレリア、光

カスタネットの軽快な音に始まり、タブラオの映像とブレリア。衣装も背景もいわゆる典型的なフラメンコの映像から、一転して海へ。水平線。シンプルなドレスとガラッと雰囲気が変わります。タンドラムとギター、パルマでの曲がとにかくとても素晴らしく、その曲の流れに乗るように、音の海にたゆたうように舞う踊り手。今回、海など野外でのパフォーマンスが多いですね。通常の舞台と違って色々と難しいと思いますが、裸足でサパテアード、そしてマルカへ。編集もプロの手によるものでしょうか。踊り手、そしてフラメンコのプロモーションビデオですね。

No.28 池野美結/【挑戦】Combinación por solo 〜neoフラメンコライブ〜/Ritmo Flamenco Rhythm Jaleos By Juan Jose Amador

これは考えましたね。創意工夫賞ものですね。固定カメラの映像を生かした、という感じでしょうか。パンタロンに闘牛士風?ベストの男装もワンピースの衣装も素敵です。おっと思うフラメンコな感じもよく出ていますし、最後の合わせの部分もいいなあ。明るい照明でちゃんとお顔の表情も見えるし、いいですね。これもシリーズ化できそうですね。

No.29 バイレ 小池朱美 カンテ 水落麻理 カホン 稲津清一/故郷からの祈り/Debla(デブラ)

海。波の音。波打ち際で裾を濡らすフラメンカ。そこに歌が重なり、歌い手の映像も重なり、沈みゆく夕日をバックに裸足でマルカール。カホンで刻むコンパス。逆光、雰囲気あっていいですね。すごく気持ちが入っているという感じ。途中、小さなコンパネとバストンがチラッと出てくるので、きっと普段は最初のマルカールから、バストン使っての振りへと進んで行くのでしょうね。そちらも見てみたいなあ。

No.30 羊と麦とマチョ/四味一体/シギリージャ

太い音を響かせる津軽三味線。着物をアレンジした衣装。三味線とギターの組み合わせはもう何十年も前から色々な試みがされており、私も日本でもスペインでも見てきていますが、これ、いいですね〜メロディラインを歌うように弾く三味線がツボです。踊り手が黒のワンピースタイプ?のドレスにギター柄の帯を合わせているのもいいなあ。色々やっているのかな? 他の曲も見てみたいです。

No.31 土井康子、山内裕之、山内彩/「オンライン風?」/Sevillanas Alosneras

リモートでのセビジャーナス。リモートだと音声のタイミングが合いにくいというでしたが、ぴったりあっているのは何か秘密があるのかな。どっちかを先に録音したとか? いやいや細かいことは分かりませんが、とにかくフラメンコぽい、パンチの効いたいいお声ですね。伴奏もスペイン的。歌詞見ながらのようですが、うん、舞台じゃないし、これもありですよね。和室で踊るセビジャーナス、いいですねえ。 二つの場面の色調を合わせるとかの工夫もいいと思います。

No.32 ギター伴奏 島田武 カンテ 中村一郎/La Petenera en 顔振峠 (versión libre con letra mixta)/La Petenera

中折れ帽子のおじさんが若いギタリストの伴奏で、酒瓶を前にペテネーラを一節うなります。なんかスペインの田舎のペーニャみたいな雰囲気ありますね。すごく上手だというわけではないのだけど、どこか聞かせるのは、これ、きっとこの方の好きだって気持ちが伝わっていることだと思います。今回海での撮影が多い中、山というのもいいなあ。そういえばディエゴ、カラスコが昔、フラメンコには海のフラメンコと山のフラメンコがある、と話してくれたなあ。

No.33 定直慎一郎/M1-S0L34 エピソード0 〜シニチーロ・ジョジーキ/カンティーニャ (Cantiña de la Monterana y la Contrabandista)

映画の一部みたいな、ビデオクリップのような、すごく凝ったビデオです。クオリティ高すぎ。歌詞からイマジネーションを膨らませたドラマ仕立てみたいな感じ。歌っているのはスペイン語だけど、字幕は日本語の訳詞のみというのも面白い。楽器も歌も本人、なのでしょうか。面白いなあ。こんな風にフラメンコで遊べる、っていいですね。

No.34 Noriko、Satsuki(バイレ)、 Poyin(カンテ)、Ivan(ギター)/グスク・フラメンコ~en lo alto del cerro~/タンゴ・デ・グラナダ

リモートでもこれだけできるんですね。映像もきれいで音もクリア。歌とギターは台湾の方たちのようですがこちらもとても上手。もうフラメンコはスペインだけのものではない、と確信を持って言える気がします。もちろん、みんなの中にはスペインへの敬愛が脈々として流れていて、それが素晴らしい。おそらく、あえて、フラメンコ風に髪を結うことなく、ワンレンボブ(というの?)で、自在に踊ります。景色もいいし、風が感じられるよう。台湾と沖縄、近いから、パンデミック開けたら色々お互いにコラボ、できそうですね。それも楽しみ。グラナダの映像もちらっと入っているのもいいなあ。

おなじみ、チック・コリア作『スペイン』のイントロで始まります。前回もお芝居のようにしていた方ですねが、今回は黒のピタッとしたパンタロンに黒のシャツ。蝶の羽をつけて、まずはブレリア一振り踊ります。かっこいい。遊び心のある方ですね。。芝居がかったモノローグは超ピンヒールで。ビデオの上下がダブルになっているのは編集?効果?なのかな。これ自動で生成されちゃうの? それとも足元を見せようとしてやっているのかな? 個人的にはこれはない方がいいような気がするんですが、どうなんでしょう。番宣じゃないけど、ちょこっと宣伝するのはいい感じ。

No.36 小倉誠司/追悼 Chick Corea/SPAIN

先だって亡くなったジャズピアニスト、チック・コリア。そのチックの代表曲の一つ『スペイン』を一人トリオで演奏。舞踊でも一人パレハありましたが、いやあ、ビデオだからできるフラメンコの遊び方、広がります。ギターを変えるだけでなく、服装もメガネも変えている遊び心もいいですね。演奏ももちろん素晴らしいですが、苦労しつつも楽しんでいる感じ、いいと思います。生じゃ絶対できないこんな工夫、いろんな人が挑戦してくれるとうれしいですね。

No.37 Esperanto/en fermita mondo/guajira

最後はプロっぽいビデオです。日常が、フラメンコ曲聴くとフラメンコに染まって、踊っているような気がする、っていう感じのイメージなのかな? サパテアードの曲のようなイントロからのグアヒーラ、かと思うと、ブレリア風、タンゴ・デ・マラガになったり? いろんな曲を自由に駆け抜けている感じ? スペイン語でいうポプリという感じ。とてもこなれた上手なギター演奏、カホンに、靴音が絡みます。

というわけで37本のビデオ、それぞれのフラメンコ、楽しませていただきました。皆さんも全部見て、フラメンコの幅広さや可能性を実感して、お気に入りのビデオを見つけてくださいね。ちなみに私はNo.1やNo.30が特に印象に残ります。全く違うテイストだけど、どっちも面白い。フラメンコに取り組もうという意欲が素敵です。さて第3回は?

 

 

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