【スペイン・フラメンコ復興ニュース】2022年のスペインのフラメンコ雑感

(ほぼ)日常に戻った! というのが2022年のスペイン。カッコ付きのほぼ、は、まだバスやタクシー、電車、航空機など公共交通機関や病院、薬局、高齢者施設ではマスク着用がまだ義務となっているから。でもそれ以外はマスクなしでOKです。劇場ももちろん開いているし、座席も間を開けることなくぎっしり満員でも大丈夫。マスクもいりません。観光客も戻ってきて、タブラオも賑わっています。外出規制があった頃に亡くなってしまったお店MOありましたが、その後、新しく開店したところもあります。また10月末にはスペイン入国時のワクチン接種証明や陰性証明なども必要なくなりました。(日本入国時にはまだ必要なのでスペインへ来る人はご注意くださいね)

右はトリアーナ、左はセビージャ。

フラメンコ公演も盛況で、ヘレスのフェスティバル、セビージャのビエナルともにいい公演がたくさんありました。
アルフォンソ・ロサ『フラメンコ、エスパシオ・クリアティーボ』メルセデス・デ・コルドバ『シ・キエロ』の2作品、私はヘレスで観ましたが、昔ながらの伝統的なフラメンコへ敬意を払いつつ、新しい要素も取り入れて観客にフラメンコを堪能させる素晴らしい作品でありました。どちらもビエナルでも上演されたのも良かったです。
ヘレスでは他にもぺぺ・トーレスとラファエル・カンパージョがとても良くて、シンプルに、純粋にフラメンコを追求し楽しませてくれる。この二人とも2022年後半、タブラオ“ガルロチ”に出演って日本も最高すぎますね。スペインだとセビージャのロス・ガジョスに出演していることが多いので要チェックです。

 

https://vimeo.com/688111475

 

ビエナルでもたくさんのアーティストが自分の表現を探して右往左往している感じ。コンテンポラリーの要素を取り入れたりしている踊り手が多いけど、全てが成功しているとはいえないんじゃないかなあ。そんな中で心に残ったのはラ・ピニョーナ『インサシアブレ』とラファエラ・カラスコ『ノクトゥルナ』。前者はフラメンコでの自己表現に成功していたと思うし、後者は視野が広いラファエラならではの、女性ダンサーたちとともに作り上げたクオリティの高い舞台作品だったと思う。でもそれより何より衝撃的だったのはロシオ・モリーナ『 カルナシオン』。本人も言う通りフラメンコ作品ではない。本人がいう“パフォーマンス”なのだけど、それでも構成、演出、音楽、舞踊。全てのクオリティが高すぎる。自分のやりたいことを自分で明確に掴んでいるからこそ、それぞれの分野の一流の専門家の協力を得て出来上がった作品なのだろう。昔ながらのフラメンコも大好きだけど、フラメンコ・アーティストがフラメンコにこだわらず表現していく世界も大好き。みんな違ってみんないい? なお、ビエナルでは歌のアントニオ・レジェスやギターのアルフレド・ラゴスも素晴らしかったなあ。若手だと思っていた彼らもいつの間にか中堅、いやもうベテランになるのかな、順調にフラメンコを背負ってくれていっているなと思ったことでした。

コンクールでは、ラ・ウニオンではエステル・メリノがランパラ・ミネーラ、舞踊がイレネ・ロサノ、ダビ・ロメロとかつて小島章司舞踊団公演に出演したことのある中堅、ギターはアルバロ・モラ。楽器はバイオリン奏者アンヘル・ボカネグラが受賞。3年に1度のコルドバのコンクールでは歌がラファ・デル・ガジ、舞踊がフアン・トマス・デ・ラ・モリーア。ギターは該当者なしでした。

また文化省のプレミオ・ナショナルはアナ・モラーレス、アンドレス・マリン、芸術功労賞はロシオ・モリーナ、ローレ・モントージャらが受賞しました。ロシオはベネツィアのビエンナーレの舞踊部門で銀獅子功労賞をも受賞しています。

8月27日にマノロ・サンルーカルが, 9月12日にはマノレーテが、と、日本とのゆかりも深いアーティストたちが亡くなりました。パコ・デ・ルシアと並び称される現代フラメンコギターの功労者マノロは日本公演でライブ録音をしたこともありますし、マノレーテも何度も来日し男性舞踊のお手本のような端正な踊りで多くのファンを魅了しました。二人とも、多くの日本人の指導を模しており、彼らの訃報にショックを受けた日本の方も多かったと思います。心より冥福をお祈りします。

時代が変わっていくのを感じずにはいられません。

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