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ギリホンド祭/萩原淳子、小谷野宏司、瀬戸口琴葉
- 2024/5/9
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セビージャから11km、人口1万人という小さな町パロマーレス・デル・リオ。かつてはオリーブ栽培など農業中心だったそうですが、現在はセビージャのベッドタウンとして、テラスハウスや一軒家が並んでいます。この町で昨年、2023年に始まったフラメンコ祭がフェスティバル・ギリホンド。ギリとは外国人のことで、そう、このフェスティバルは世界で唯一の、スペイン以外の国で生まれたアーティストたちにフォーカスしたフラメンコ祭なのです。
昨年は4月の開催で、中国出身のギタリストや歌い手、イタリアやボリビア、エストニア人の踊り手などが出演しました。今年は日本が招待国ということで、開会宣言/講演が、パロマーレスの隣町、ハポンさんで有名なコリア・デル・リオ出身でかつてアンダルシア州文化長官やアンダルシア国際大学学長などを歴任し、クリスティーナ・オヨスやマヌエル・モラオの伝記の著者でもあるフアン・マヌエル・スアレス氏の日本とフラメンコについての講演に始まり、初日はフランスはマルセイユの歌手ホセ・デ・ラネグレータのリサイタル、
二日目はフェスティバル監督のフラメンコ研究家マノロ・ボルケスによる志風へのインタビューに始まり、
セビージャ在住のオランダ人ギタリスト、ユス・ウィエガーズのリサイタル(最近、伴奏で活躍してるようだけど、ソロが良かった)
パロマーレス在住の踊り手カルメラ・リケーニの力強く思いを伝えようとする舞踊公演
ときて3日目。熱血鉄火肌フラメンコの歌い手パケーラ・デ・ヘレスの日本公演のドキュメンタリー『ポル・オリエンテ・サレ・エル・ソル/パケーラ先生』mp監督インタビュー、本編上映に引き続き、萩原淳子が登場。
最初と最後にマントンを使ったタラント。
ギターソロを挟んで
アバニコでのカラコーレス。客席に語りかけたり、とユーモアを交えて。いつもとは違う顔をも見せる。
そして最後はソレア。バタ・デ・コーラで。真摯にフラメンコと向き合っているのが一目瞭然。
後ろ姿が美しいってのが素晴らしい。このポーズだけでも、踊りのインテンシオンというか、赤い衣装でも、上昇感のあるアレグリアスではなく、内へ潜っていくソレアの感じが出ていると思います。顔の角度かな? 萩原は短い時間で工夫して構成して、“作品”に、という意識があったのだと思うけど、今年完成したばかりの劇場ということもあってか、技術の問題(ギターソロの最初照明がつかない、靴音がほぼ聞こえない、ワイヤレスマイクがうまく作動しない等)などが多数あり、結果として作品というよりリサイタル、ソロコンサートという感じでしたが、いずれにしてもレパートリーの広さ、精確な技術、知識の深さを観客に印象付けたことと思います。でも本当はもっとすごいんだけど、と私が思ってたのも本当。
短い休憩を挟んで小谷野宏司がブレリアとタンゴを歌い踊ります。フェスティバル監督がビデオを見て、この人に連絡取りたい、と言ってきたのがきっかけ。実現するとはスペイン側も本人も思ってなかったと思うけど。頑張りました。
日本ではこういう一人舞台ってやっているのかな?私は野村眞里子さんの出版記念公演で観ただけだけど。あの時のロマンセのような少しシリアスなものではじめて、あとでよりフィエスタ的な曲に進むとか、構成に工夫あっても良かったかも? 踊り手だから最初か最後に踊り手らしいところ見せるとか? 最後パルメーラたちと踊るとか、と思うのはわがままですね、はい、すみません。
パルマはニシウチサチコ、瀬戸口琴葉、コバヤシマキコ。ギターはカルロス・レオン。
最終日は志風にクリスティーナ・ヘーレン賞授与(ありがとうございます!)のあと、
へーレン財団フラメンコ学校を代表して瀬戸口琴葉がソレア・ポル・ブレリアをきちんと踊り、
オランダ人ギタリスト、ティノ・バン・デル・スマンのオリジナリティあふれるソロ演奏。馴染みのあるメロディを挟みながらどんどん冒険に出ていく感じとか、パーカッションと二人、楽しませてくれました。
そしてミゲル・アンヘル・コルテス伴奏のエスペランサ・フェルナンデスが大トリを務め閉幕しました。パーカッションはエスペランサの息子ミゲル・フェルナンデスです。マラゲーニャ、ソレア、タンゴなど歌い継いで行ったけど、最後のブレリアが良かった!
なお、期間中、劇場横の昔のオリーブオイルの圧搾場では、名古屋出身、アルヘシラス在住の写真家、Tomoyuki Hottaさんのフラメンコ写真展も開催されました。アルヘシラスの街の人やカルチャーシーンを長らく撮り続けている人で、アルヘシラスのフラメンコ祭などの写真が。ただ、パコの公演は東京都アルヘシラスでご覧になったそうですが、撮影したことはないそう。パコがどんなふうに映るのかみてみたかった気がします。
フラメンコはスペインで生まれ育った文化。でもその成長のそばにはいつも外国人の存在がありました。フラメンコの価値を認めお金を払ってその成立、成長を助けたのも外国人なら、長い歴史の中では外国生まれのアーティストも多数いました。特に舞踊では、ホセ・グレコ、ルイシージョ、ルセロ・テナら数多くのスターをも輩出しています。現在でもカナダ出身のクロエ・ブルーレ、チリ出身のフロレンシア・オスなどがいますね。CDをリリースしている人も最終日に出演したティノらがいるし、歌い手でもアメリカ人、マリア・ラ・マルーラがいますね。アルテは国境を越えるもの。クラシックバレエやジャズのように、フラメンコでも国籍に関係ない評価、活躍が実現していくだろうと信じています。