ヘレスのフェスティバル時の日本人公演

©︎ Kyoko Shikaze

 今年も2月23日から3月9日まで、恒例ヘレスのフェスティバルが開催されました。ヘレス市の主催で行われている世界で唯一の、フラメンコとスペイン舞踊に特化したフェスティバルも今年で28回。出演者もフェスティバル主催の短期クラス講師陣も様変わりして、世代交代が確実に進んでいるな、と実感しました。今年も、アルフォンソ・ロサとパトリシア・ゲレーロの『アルテル・エゴ』、ホアキン・グリロ『クチャロン、イ・ウン・パソ・アトラス』など素晴らしい作品をたくさん観ることができました。

©︎ Esteban Abión Festival de Jerez
©︎Tamara Pastora Festival de Jerez

また終幕を飾ったマヌエラ・カラスコのソレアがそれはそれは素晴らしく多くの人の心にいつまでも残ることでしょう。

©︎Tamara Pastora Festival de Jerez

 また、今年はフェスティバルのオフィシャル公演には、ハビエル・ラトーレの振り付け工房最終日の舞台以外には日本人の出演はありませんでしたが、メルセデス・ルイス『ロマンセーロ・デル・バイレ・フラメンコ』ではヘレス在住のフラメンコ衣装製作家、堀江啓子の衣装が登場しました。この黒いバタ・デ・コーラが彼女の作品です。フラメンコの世界で活躍しているのは踊り手だけではないのです。

©︎Tamara Pastora Festival de Jerez

 ヘレスのフェスティバル開催時に、毎年開催されているラ・グアリダ・デル・アンヘルのオフ・フェスティバル。本家のフェスティバルに登場するような第一線で活躍するアーティストから地元の舞踊学校の発表会まで、さまざまな公演が行われていますが、日本人アーティストも毎年複数登場しています。今年は2月25日セルヒオ・ゴンサレスとの共演で野上裕美が出演したのを皮切りに、27日には石川慶子(バタ、マントンで華やかなカーニャ)、

川本のりこ(ソレアをしっとりと)がフアン・ポルビージョと共演。

2月29日には佐藤浩希(ソレアとシギリージャの2曲。経験からの風格、重みが出てきています)

中里眞央*(タンゴとシギリージャ。最後はブレリアのパタイータも)がマヌエル・マレーナ、マレーナ・イーホらと共演。

そして3月5日は『日本からヘレスへ』と題し、松下幸恵(重みのあるタラント)、

安井理沙(ティエント、タンゴ。マノが綺麗)

林結花(重厚なシギリージャ、心を込めて)

宇根由佳(去年コンクール優勝のグアヒーラ)

荒濱早絵(ソレアの深淵に潜っていく素晴らしいパフォーマンスでした)

山下美希(タラントの悲劇性、悲しみと優しさ、強さなどの表現が素晴らしい)

シンガポール在住で、まだキャリアは浅い景山綾子(明るく楽しい笑顔のカンティーニャ)

9日には萩原淳子が登場しました。なお、萩原は他にも劇場近くのタバンコ、エル・パサへに3日出演。風邪ひいて現地には行けなかったのですが配信で観覧。抜群の安定感で、何を踊っても平均点以上を叩き出すのはさすが。スペイン人と並んでも全く引けを取りません。

©︎ Antonio Pérez

 そんな中、最も注目されたのは新譜発表記念コンサートをペーニャ・ラ・ブレリアで開催した小林亮かもしれません。日本人舞踊家の公演はこれまでもたくさん行われていますし、俵英三のように伴奏で大きなフェスティバルに何度も出演した人はいましたが、ソリストとしてのギター公演はとても珍しいことだと思います。公演は満員札止め。立ち見も多数出る盛況でした。

 ヘスース・メンデス、アンドレス、ペーニャ、アネ・カラスコと、日本ツアーに参加した、ヘレス生え抜きのメンバーに加え、マヌエル・カンタローテとディエゴ・モントージャのパルマも加わり、ヘレスならでは土地の“気”もあったのか、東京公演以上の素晴らしいコンサートとなりました。

観客は、フェスティバルでヘレスに来ている日本人を含めた外国人が多かったですが、地元ヘレスの面々をも魅了し尽くしていました。

©︎ Claudia Ruiz

クレジットのない写真は志風撮影のものです。またヘレスのフェスティバル公演評など詳細は志風ブログに書いています。https://noticiaflamenca.blogspot.com

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