新宿『ガルロチ』でロシオ・モリーナの特別公演が始まりました。
原則、劇場、それもセビージャのマエストランサなどオペラハウスをはじめとする世界中の大劇場を舞台に活躍している、スペインの現代フラメンコ舞踊を代表するアーティストであるロシオ・モリーナが、日本のタブラオの舞台に出演するというだけで驚きなのに、この公演がまた予想の上を超えてくるものすごい公演でありました。鳥肌立つとか総毛立つとか言いますが、それすら越えて、全ての毛穴が開いちゃうような、ゾクゾクする公演でありました。心が揺さぶられ、体の奥底に眠っていた感情が引きずり出されていくような、そんな感じ。聞くところによるとまったくのインプロ。しかも毎日内容が違うそうで、こんなこれを見逃しては一生の損だと思います。
それに先駆け、セビージャにいるロシオに11月初め、日本からメールでインタビューしました。こちらは、ガルロチのfacebookでシェアされていますが、初日の公演を見たあとで読むとなるほど、と頷くことも多く、こちらにも掲載させていただくことにします。(写真はガルロチ初日公演のフィン・デ・フィエスタより)
やっと日本に来てくれますね。2020年世界的なパンデミックのため、『カイダ・デル・シエロ』での来日公演が中止になって3年ですね。今、どんなお気持ちでしょうか。
「日本公演だけでなく、パンデミックでたくさんの公演や計画がキャンセルになった後なので特別な思いがあります。もうずいぶん時間がたってしまったし、また来日することができるということで本当にとても楽しみにしています」
日本へはもう何度もいらっしゃっています。私の勘違いでなければ、最初が2001年マリア・パヘス舞踊団の一員としてで、2005年には愛知万博関連して行われたフラメンコ・フェスティバルでのガラ公演で、カルメン・コルテスらと共演しました。2011年には教授活動で来日し、2014年、2015年はご自身のカンパニーで来日公演を行っていらっしゃいます。何か思い出がありますか?日本の印象はいかがですか?
「日本へは若いときから何度も行ってます。最初はたしか17歳の時で、日本で成人(訳注;スペインの成人は18歳)を迎えたんですよ。たしかに舞踊団やガラ公演、コラボレーションなど、いろんな形で訪れていますし、日本で知り合った、スペイン人アーティストもいます。日本の文化に、(スペインとは)全く違う国に親しもうとしました。日本のことは良い思い出として思い出します」
今回は新宿のシアターレストラン、ガルロチでの公演ですが、ガルロチをご存知でしたか?以前はエル・フラメンコという名前だったこの伝説的タブラオに行ったことはありますか?
「ガルロチは、まだエル・フラメンコだった頃、公演で来日した時仲間たちに会うために訪れたことがあります。それが唯一の経験です。すごく若い頃、6ヶ月その店に出演するというオファーを受けたこともあります。でも私は予定がいつもいろいろつまっていて、半年間スペインを留守にすることができなかったんです。ずっと行ってみたかったのですが、実現できなかったんです。だから今、行くことができるのがとても楽しみなんです。以前のオファーよりはずっと短い期間ではありますが」
フェスティバル、ペーニャ、タブラオ、世界中の大劇場…幼い頃からずっと多くの舞台に立っていらっしゃいます。近年は伝統的なものから前衛的なものまで、さまざまな作品を私たちにみせてくださっています。それが今、再びタブラオの舞台に上がります。どうお感じですか?また日本の観客に何を見せていただくのでしょうか? ガルロチでの作品はどう言ったものになるでしょう…今お話しできる範囲でお教えください。
「実は私はタブラオのフォーマットで踊ることをやめたことは一度もないんです。より小さな会場だったり、劇場でだったこともありますが、ミュージシャンたちと一緒に、今回ガルロチでおみせするようなフォーマットで舞台に立ってきました。ギターと歌とコンパスでの舞台。フラメンコの神秘が、すべてがあります。そのばでの、その時々のインスピレーションで、共演の仲間たち、素晴らしいミュージシャン、アーティストたちのパフォーマンスを堪能し、ドゥエンデが導くまま、その瞬間のインスピレーションに身をゆだねます。もちろん、いつも通りのフラメンコ曲、シギリージャ、アレグリアス、ソレア、ブレリア…そんな曲たちが登場します」
今回の共演者についてお教えください。どんなアーティストでどんな人ですか?
「今回、私と一緒に来てくれる仲間たちは、私にとって本当に素晴らしい贈り物。プレゼントをもらったように感じさせてくれます。私たちみんなで楽しみながらこの贈り物を客席のみなさんにも楽しんでもらいたいと思っています。
まずはホセ・マヌエル、エル・オルーコ。彼とは、もう12年以上一緒にやってきて、良い関係が築けているし、フラメンコの決まりをわかった上でそれを一度ほどいてなくして、私たちにしか通じない独自の決まりをつくっています。彼が私と一緒に来てくれるのは名誉なことで、その上、今回はいつも私の作品にパルマで参加してくれている彼の踊りも堪能することができ、私が彼にパルマを打つのも、私は彼のようにうまくはできないけれど、とても楽しみだし、私にとって名誉なことです。
ジェライ・コルテスのギターは、現在、最も直感的なギターで、よくわかっているしとにかく自由。ジェライと私はゲームを遊んでいるような感じ。互いをいろんな風に驚かせようとしています。遊びにすべてをかけている感じです。だからかれの素晴らしい才能を聴いていただく良い機会ですし。彼とも二人だけの決まりを、ゲームの決まりを作っています。
ペペ・デ・プーラは、すごく共演してみたかった人です。もうずいぶん前に知り合ってはいたのですが、これまで共演のチャンスがなかったので今回声をかけました。知識も経験も兼ね備えた、現在最も奥深い歌い手の一人だと思います。素晴らしい特別な声を持っていますし、みんなで一緒にできるのが楽しみです。
みんなアーティストとしてだけでなく人間的にも素晴らしい人たちで、ペペ以外とはもう付き合いも長いですし、ペペとオルーコは長年の付き合いがあるそうですし、すごく良い形になると思います」
2024年の予定をお聞かせください。近い将来、新作初演の予定はありますか。
「2023ー2024年は私にとって今までできなかったことを実現させる時間を作る、という年でもあったんです。だからこうしてタブラオにも行くこともできるのです。2024年は少しずつ新作の準備に入ります。作品作りはいつでもそうですがたくさん聞いて聴いて、一生懸命。時間もたっぷりかかります」
素晴らしい経歴で、さまざまな賞を受賞、どこへ行っても劇場は満員で喝采があなたを待っています。アーティストが夢みる、あらゆる夢を叶えているように思えます。まだ叶っていない夢はありますか?
「たしかに私はこれまでキャリアを歩んでいく中、幸運にもたくさんの素晴らしいことがありましたし、夢が現実になったみたいというのも本当です。まだ叶えたい夢があるかというご質問ですが、私は夢をゴールとして捉えたことはないんです。私の身に起こること全てを味わい楽しんでいるんです。生きている瞬間瞬間に満足しているんです。だから今の夢は、日本に行くこと。素晴らしいグループで、踊って、日本を楽しんで、その後で家に帰って家族とクリスマスをお祝いすること。それ以上のこと、それより先のことはありません」
日本の観客へメッセージをお願いします。
「愛する日本の皆さんにスペインからお伝えしたいのは、もうすでに日本に行きたくてたまらない気持ちだと言うことと、ガルロチでエル・オルーコ、ジェライ、ペペ・デ・プーラと一緒に、夜ごと身も心も捧げ、毎日違った、特別な夜になると思います。魔法のようなひとときを皆さんと共有できることを(出演者)みんなで楽しみにしています。
皆さんに早くお会いできますように。ぜひ会いに来てくださいね」
9月にセビージャのセントラル劇場で会った時も日本に行くのをとても楽しみだと語っていたロシオ。日本でしか観ることができない特別なステージ、お見逃しなく!
ロシオ・モリーナ来日公演en GARLOCHÍ
【ご予約】
WEB:
https://t.livepocket.jp/t/rociomolina
Email:
garlochilive@gmail.com
【出演期間】
2023年12月1日(金)〜12月10日(日)
【出演者】
Baile: Rocío Molina
Guitarra: Yerai Cortés
Cante: Pepe de Pura
Compás y baile: José Manuel “El Oruco”
【場所】
Show レストランGARLOCHÍ
東京都新宿区新宿3-15-17 伊勢丹会館6F
主催/株式会社バモス
後援/スペイン大使館・インスティトゥト・セルバンテス東京・一般社団法人日本フラメンコ協会・公益財団法人スペイン舞踊振興MARUWA財団
協力/Showレストラン「ガルロチ」・「ソニアジョーンズ 」Sonia Johnes