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第3回フラメンコWeb フェスティバル 全ビデオ紹介/感想コメント
- 2022/8/3
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2020年に始まったこのフェスティバルもこれが3回目。フラメンコの要素のある未発表の動画という条件で集まった動画は、23本。専門家による審査のあるコンクールではなくウエブ上で視聴者が投票するフェスティバルという形です。一般の投票という形で賞をおくるのはフラメンコでは、ヘレスのフェスティバルの観客賞くらいで、世界的にも非常に珍しいと思います。そのほかにもスポンサー各社が独自に選ぶ賞もあります。
第1回が44本、第2回が37本だったのに比べると参加者は減少していますが、それだけ実際のライブが復活している証拠のようにも思えます。まだスペインとの往来は以前のようには行きませんが、少しずつ元に戻ってきているのは嬉しい限りです。
このフェスティバルでは、歌、踊り、ギターといったパフォーマンスそのものだけでなく、映像作品としての表現も、ラフメンコを魅せる、フラメンコで楽しませる、ためのテクニックの一つとなることも特徴の一つかもしれません。また、フラメンコの要素があるというのが唯一の条件なので、昔ながらのフラメンコ曲のパフォーマンスだけでなく、フラメンコのテクニックを使い他のジャンルの曲を踊る、歌う、なども特徴です。“フラメンコを”、ではなく、“フラメンコで”、表現するというわけです。ポピュラーな曲などをフラメンコで、表現することでフラメンコそのものにも興味を持ってもらおう、ということもあるとは思いますが、フラメンコを自分の言葉のようにして、それを自由に楽しんでいる、というのはいい感じだなあ、と思っています。そういう自由なパフォーマンスに惹かれるところのある人の、伝統的なフラメンコのパフォーマンスも見たいなあ、と思ったり。見るこちらも自由に楽しませて頂きました。以下に志風の個人的な感想を記します。
※第3回フラメンコWeb フェスティバル入賞者はこちら
※動画特設サイト:https://www.flamencovideo.net/
発想がいいですね。よく知られた曲をフラメンコのテクニックで踊るというのはマリア・パヘスもやっていました。3人の、スリットの入った黒い衣装の女性がマントンを回すオープニング、マントンをコルドベスにかえて、ゆっくり目のタンゴのリズムでルパン3世のテーマを踊ります。歌のところはマルカールだけ、というか全体的に足はほとんどありません。フラメンコの足技、サパテアードはパーカッションでもあるので音楽と絡ませるともっとカッコ良くなるように思います。フラメンコではあまりスリットの入った衣装ってあまりないんですが、峰不二子のイメージならスリットもっと深く入っていてもいいかもしれないですね。
発表会?の舞台映像。生伴奏、装置もあって豪華。ソロを踊るだけの実力、舞台度胸もある方なのでしょう。一つ一つの振りのセンティード、この動きはどういう意味/方向付けなのか、を考えて一つずつきっちりやりきっていくともっと良くなります。ポーズの止め方とかでメリハリつけるとかもいいと思います。振りの順番覚えるだけでも大変だとは思いますが、もっと踊り込んで行って、ニュアンスが出せるようになればすごいと思います。衣装は山娘を意識したのか、ターバン風だけど、山娘に徹底してない感じもするのでもっとシンプルでもよかったかという気もします。
偶然ですが、2とターバンつながり。衣装もどこかエキゾチックで、舞台なのかな、照明も綺麗な映像です。クラシック曲のギター演奏での踊りなのでエスティリサーダ風とも言えるかもしれませんね。アバニコの使い方も上手だし、形も綺麗。技術が、実力がある人です、ポーズでのメリハリの付け方とか良いお手本になりそう。無理に欲を言えば背中の緊張感がもう少しあってもいいかもしれませんし、広い舞台を生かしてもっと大きく、空間の広がりを感じさせてほしい気もします。でもそんなことなしでも十分良い一曲でありました。この曲、フラメンコギターでルンバ風にもいけそうっすね。
3とはクラシック曲つながり?スペインを代表する作曲家の一人、アルベニスの曲でのエスティリサーダ、クラシコ・エスパニョール風。マントンを使って生ピアノで。生ピアノですが、ピアニストは基本踊り手に背を向けているのが残念。スペースの関係だったのかな? でもせっかくの生共演なのでコミュニケーションがもっとあったら素敵だろうなと正直思います。って、でも踊りを見ながら合わせるとかできるピアニストってそういないかもですね。でもせっかくですから最後は嘘でもいいから目を合わせてにっこり?みたいなの欲しかったかも。きちんとまとめた一曲です。胴体の使い方、工夫すればもっとよくなりそう。
実力派のプロによる創作第3弾。寸劇フラメンコ。発想も面白いし、ゲストも含め、フラメンコそのもののテクニックなど、実力があるから、これもいいと思います。この人の想像力でフラメンコの舞台作品を作ったら、映画を作ったらどんなものができるのだろうとこちらの想像力も刺激されます。でも一度、伝統的なフラメンコをきちんと一曲みたい、という気にさせられます。あ、これで興味を持ってもらって舞台見に行きてもらう、そういう手なのかも。まんまとのせられていますね。
ギターソロ。普段公演を観ても、CDなどを聴いていてもファルセータだけ聴く、っていう機会はあまりないので面白く聴けました。でもこれも一曲ちゃんと聴きたくなります。あ、これもそういう手なのかしらん? フラメンコのギターは、伴奏とソロとでは違うジャンルのように扱われている面もあって、ソロ専門の人には伴奏があまり上手でない人もいるし、伴奏を主にやっている人の中にはソロというとファルセータを繋ぎました、という感じで曲全体の構想とかが全くないような曲を聴かせる人もいるんですよね。もちろん、両方うまい人もいますが。って余談でした。
場所はトリアーナにあるへーレン財団学校のパティオかな?セビージャで勉強中のギタリストが自分で歌うマラゲーニャ。メロディーを追っていこうとしていてそこでの伴奏とのバランスは当たり前だけど良いですね。実際に歌い手とやると基本、歌い手の呼吸にギタリストが合わせなくちゃならなくなるからどうなるか、ということはあるし、カンテ単体で評価するには声が細すぎる、声が前に出ていないなどありますが、雰囲気はよいのでこれはこれでいいのではないでしょうか。ギタリストも踊り手も歌の理解があってこそという部分があるのでその意味でも評価したいです。
5とのマイコーつながり?なんと、ビリージーンと来ましたか。かっこよくまとめています。マイコーぽい振りと、フラメンコな振りとがうまく組み合わせてあって、またタブラオの小さな舞台でもフォーメーションもよく考えているし、さすがプロ、といったところでしょうか。アクセントの付け方もうまいなあ。なんか色々可能性感じます。これはフラメンコの人にしか踊れないですね。
短編映画みたいなオープニング。障子をバックに赤い衣装に黒いマントンで、パーカッションの音で踊ります。このパーカッションがアフリカンのようにもポリネシアンのようでもあり。ただ靴音はほとんど聞こえずちょっと残念。サパテアードもパーカッションなので掛け合いのような感じがあるといいかも。和とフラメンコの組み合わせはいろんな人がいろんな風にやっていますが、まだまだ可能性のあるジャンルだと思います。また、畳の上で裸足もありかもですね。
タブラオ、アルハンブラでのライブからの抜粋。ギターと三線伴奏の歌ソロで始まる。そこに沖縄民族衣装姿の3人登場して、曲はセビジャーナスにアレンジされて歌われ踊られるという、意表をついた展開。セビジャーナスの曲としての完成度が非常に高く脱帽。笠の方は沖縄伝統舞踊の人なのでしょうか、小さめに動かす腕のラインも綺麗だし、手の動かし方が繊細で素晴らしかったです。フラメンコは沖縄にルーツがある、とか言いたくなるほどです。ヘレスのブレリアの宴と沖縄のカチャーシーと似てるんじゃないか、とか考え出したりして。沖縄フラメンコ、掘り下げてほしいです。
洋館風レストランでの演奏。原曲を知らなかったので検索して聞いてみました。歌にしても演奏にしてもオリジナルに忠実なように思いました。これはフラメンコギターとカホン、そしてサックスによる伴奏だけどフラメンコ味をあまり感じられなかったのはなんでだろう、と考えさせられました。じゃ、フラメンコ度を上げるためにはどうすればいいのか、とか考えると、例えばパルマで盛り上げる、とか、フラメンコぽい決め、コルテを入れるなどがあるんじゃないかな、と思ったり。難しいですね。また、きれいな声なのでフラメンコを歌ったらどんな風になるのかも知りたくなります。
これも面白い試みだと思います。サパテアードを楽器として使ってみる、という感じ?そこに集中したかったのかもですが、体全体も入れての表現にしたらもっと面白いのではないでしょうか。あ、コメント読むと撮影失敗があったのですね。それは残念でした。靴音がちょっと前乗りなのも、踊り手ならでは、かも? 靴音も録音のせいかちょっとこもった音で、一本調子かな。靴音でさまざまな音色が出てくるともっと良くなりますね、メロディーが聞こえてきそうな靴音、期待してます。
ミニスカ衣装にジージャン、ブーツ、ポニーテールと、ロカビリー少女風の衣装で踊るファルーカ。衣装以外は構成も振付も案外伝統的な感じなので、そのギャップを狙ったのかな。それともなんか物語のある作品の一部分で意味がある衣装なのだろうか。わからないけど。劇場風の赤い幕の前だけどスタジオということで、多分三脚で撮影しているだろうカメラがサパテアードで揺れるのも臨場感いっぱいですね。
オフとオン。ヘレス風ファルセータで始まるブレリア、普段着でのジャマーダから衣装に変身。踊る3人みんな笑顔で、楽しそうで本当にいいね。楽しむって大切。これはみる人誰もが文句なしに、なんか楽しそう、やってみたい、って思いそう。普段着から衣装へ、っていうのも普通の人たちが親しみ持てそうだし、ビデオに挿入されるスナップもとにかく楽しそうで。欲を言えば、なんちゃって、でもいいから歌が欲しかったかも。今回のコントのところが歌って下手でどつかれる、的なのを入れてもよかったんじゃないか、とか、見てるこちらの妄想はふくらむ。次回はぜひ歌って踊って、で。怖い表情じゃないフラメンコ、ユーモアのあるフラメンコの旗手として期待しています。
YouTubeのバレエあるある(松浦景子のけっけちゃんねる)のファンですが、これはそのフラメンコ版ですね。あ、YouTubeでフラメンコあるある、のシリーズでショートでも投稿しているのですね、なるほど。それをまとめて一本にしているという形なのでしょうか。フラメンコを知っている人なら身に覚えがあったり、で、きっと笑っちゃうはず。力作。以前からフラメンコの普及に力入れていろんな試みをやっている方ですが、ここまで振り切って、徹底してできるのはすごいと思います。
和とフラメンコ。芸妓の衣装でシギリージャの振り付けだそうだが、曲が違うのでシギリージャ味はほぼ感じられないですね。また芸妓さんって黒いお衣装のイメージがあるので、このお衣装はちょっと不思議。昔の身体の小さい人用のお着物に付け足したみたいな袖のサテン地みたいなのとか、あまり品が良くないように見えてしまいますね。いかにも芸妓さんという感じの黒地のお引きずりに足袋と和扇でバタ・デ・コーラ風にシギリージャ踊ったらカッコよかっただろうな、とまた妄想。何がこれはフラメンコだと感じさせるのか、何をしてフラメンコとなるのか、ということなど考えさせらます。猫の仮面でタンゴとか、盛りだくさん。でも盛りだくさんすぎてポイントがボケちゃった感あるかもしれません。
華やかなマントンをバックに自身もマントンをまとってのバンベーラ。前回に引き続きいろんな衣装の一人三役、分身の術。3人(一人だけど便宜上そう言います)のコンビネーションも素敵ですね。ただ振り付け的にも音楽的にもソレア・ポル・ブレリア/ブレリア・ポル・ソレア、で、バンベーラらしさはあまりないですね。リズム的にはあっているのですがバンベーラという曲を選んだからにはバンベーラらしく、がほしいと思うわけです。
暗いスタジオで黒い衣装。シギリージャという重厚でシリアスな曲種ゆえのこととは思うのですが、もう少し顔に光当てるか、全体に明るくてもよかったようにも思います。伴奏のミュージシャンは最後に名前のみクレジットされるのですが、録音だったのでしょうか。ビデオにも登場しないし、コメント欄にもお名前をいれた方がみやすいです。あと回転、軸を意識すると良くなるのではないかと思います。
コメントにある通り、イメージ優先なので、踊りを見るとかフラメンコを見るというよりもイメージで感じる、という雰囲気のように思います。ビデオとしてのかっこよさはあっても、踊りを見たい人は欲求不満になっちゃうような。個人的に動くカメラや切替の多い編集は乗り物酔いみたいになるので苦手です。サパテアードがちゃんとパーカッションでギターとかけあいしているところもあるので、ストレートな踊りとしてのビデオも見てみたいですね。これもフラメンコ曲じゃないものをフラメンコギターで演奏しているのですがラスゲアードの多用やリズムの協調でよりフラメンコぽく聞こえますね。
ムーチョ・センティミエント、気持ちいっぱいに歌っています。音程やリズムがかなり揺れてしまうのでそこを正しくしていくのは課題ですが、まずはこの好き、という気持ちがあるのが一番いいところではないでしょうか。これだけ自由な歌いっぷりへのギター伴奏、難しいと思いますがよくサポートしてらっしゃると思います。
もうこれは短編映画。フラメンコの要素というのは最初のディネーロという叫びくらい? 中心となるのはジャニス・ジョプリンの歌だし、舞台はブレードランナーとブラックレイン混ぜたみたいな、やばい雰囲気なTokioだし、とかも思うのですが、フラメンコじゃないけどフラメンコ、なところもあるような。スピリットですかね。ジャニスの声はフラメンコだし、彼女の歌は地べたからの叫びみたいでフラメンコと通じるところがあるし。オタマトーンがツボ。
1987年発表されたパコ・デ・ルシアが`(ジャズなどとの共演を経て)フラメンコに帰ってきた!と言われたアルバム『熱風(シロコ)』収録のアレグリアス、『ラ・バローサ』はパコが長くライブでも演奏していたので覚えている人も多いでしょう。この難しいアレグリアスと真摯に取り組み、しっかり演奏しています。テクニックはもちろんですが、オリジナルのテンポや呼吸をもよく勉強されていると思います。
ガデスのカルメンで日本でも一躍知られるようになったマンサニータの『ベルデ』。フラメンコ味は薄く、どちらかというとカンシオンとしての歌唱ですね。声は前に出ているので、よりフラメンコにするならリズムを意識してメリハリつけるといいのではないかと思います。あと細かいことですが、ramoではなくrama ですね。