『コロナ終息後の飛躍と拡大を目指して』/復興ニュース開始に寄せて

緊急事態宣言延期、先の見えないトンネルはどこまで続く?

54日、新型コロナウイルス感染拡大防止のための緊急事態宣言の期限が、当初の56日から531日までに延長された。

47日に発令されたこの宣言には、フラメンコに関係する部分で言えば、ライブハウス等の遊興施設に休止要請、また飲食店への営業時間短縮要請といった内容が含まれている。

これにより全てのライブは中止または延期となり、「三密」を避けるためフラメンコ教室も休講を余儀なくされた。その期間が延長された事、また新型コロナ自体の終息が見えないこともあって、フラメンコ界の苦難はまだまだ続くと思われる。

この暗くて重苦しいトンネルは、いったいどこまで続くのだろうか。東京におけるフラメンコのメッカ、高円寺のカサ・デ・エスペランサのマスターであり、日本フラメンコ協会の事務局長である田代淳さんが、51日にFacebookでお店の営業状況を告知していた。

4月に続いて5月もライブは無し、悲しいかな全休とします。
6月後半7月辺りで、ぼちぼちライブが再開出来たらと願ってます」

「こんなスケジュール表初めて」と、田代さんがアップした写真。(※田代さんのコメントと写真は、ご本人の許可を得て引用させていただきました)

そしてコメントは、こう続く。

「早く店を開けたいです!!

その一言は、こう言い換えてもなんの差支えもないはずだ。

「早く舞台で踊りたいです!!
「早くクラスに出たいです!!
「早くライブを観たいです!!」と。

田代さんの言葉は、まさにフラメンコに関わる全ての人の叫びだった。

そんな状況の中でも、田代さんはフラメンコに携わる人が受けられる支援情報を発信したり、日本フラメンコ協会の動画プロジェクト「セビジャーナスつなぎ」を進めるなど、日本フラメンコ界の灯を守るためにご尽力されている。

苦難の中で芽生えた新たな可能性「ネット配信」

しかし、この状況だからこそ新しいチャレンジをする人もいる。ネットによるライブ配信と、オンラインレッスンだ。

44日、バイラオールの三枝雄輔さんが、You Tubeでネット配信による無観客ソロ・ライブを行なった。当初は観客を入れる予定だったが、緊急事態宣言を受けて急遽変更したという。

「もともと、通常ライブにオンライン生配信を取り入れる事はずっと考えていた」と、雄輔さんは語る。新型コロナの拡大により、図らずもライブ配信着手のきっかけが訪れたことになる。

この日のライブは、視聴者が書き込んだコメントをタブレットを手にした雄輔さんが読み上げたり、東京から離れた地域で視聴する方もいるなど、ライブ配信ならではの楽しみ方、可能性を示唆した貴重なライブとなった。

411日には、鈴木眞澄さん、三枝雄輔さん、三枝麻衣さんの3人が出演するファミリアライブが配信された。こちらは瞬間最大視聴者数319を数える大盛況。この数字は、ライブ配信が認知され始めていることの証左と言えそうだ。

最大視聴者数319人の瞬間。ちょっとした規模のホールなら満席にしてしまう人数だ。

雄輔さんはポータルサイト「FLAMENCOLIVE JAPAN」を立ち上げ、今後もライブ配信に力を入れていくという。多くの方にぜひ注目していただきたいプロジェクトだ。

FLAMENCOLIVE JAPAN」の公式サイトはこちら
https://flamencolive.jp/


また今、すっかりポピュラーとなっているのがオンラインレッスンだ。激しい踊りで観る者の心を奪うバイラオーラの本間静香さんも、コロナ禍をきっかけにオンラインレッスンに着手した
1人だ。

オンラインてなあに?というくらい近代的な機器が苦手な静香さんだったが、スマホとZOOMを使い、「友人知人達に協力してもらってテストを重ねて、出来ることがかなり制限されると理解していく中、その中で徐々に自分なりのオリジナルのオンラインレッスンのイメージ像を描いていきました」と語ってくれた。

そして421日、最初の無料お試しレッスンを開催してからは、立て続けにオンラインレッスンを開催。5月の連休は連日オンラインレッスンを行なうハッスルぶりだ。生徒さんの評判もよく、Facebookでは「楽しすぎて2日続けてレッスンを受けた」との書き込みも見られた。

「普段会えない方に、オンラインだと会えて、しかも一緒に踊って汗を流せるんです」

雄輔さんのライブ配信もそうだが、位置的な制約を受けないのがネットの強みだ。静香さんのオンラインレッスンには岩手や富山、海外からの参加者もいたという。

新しい一歩を踏み出した静香さんは、「こんなに楽しいものだったんだと、皆さん(生徒さん)に教えてもらえた感じです! また、皆さんに育ててもらっているとも感じています」と語り、コロナが終息してもオンラインレッスンを続けると明言。これからの発展が楽しみだ。

Facebookで使われた告知写真。静香さんご自身が、オンラインレッスンを楽しんでいることがよく伝わってくる。

ネットとリアルの融合によるフラメンコの拡大を目指して

ライブ配信やオンラインレッスンの普及を見ればわかる通り、図らずもコロナの拡大をきっかけとして、日本のフラメンコ界は新しい時代へと突入し始めている。ネットを活用することで位置的な制限を受けずに、遠方の人でもライブが見られ、レッスンも受けられる時代が来ているのだ。

スマホが普及した今、ネットがあれば、いつでもどこでも誰でも、安価に情報を手にし、エンターテインメントに触れられる。ネットのない生活など考えられない、それが現代だ。

そこに今、フラメンコが乗り込もうとしている。

先に紹介した三枝雄輔さんのライブ配信は投げ銭形式で、視聴料は基本1,000円。つまり安価にライブが楽しめる。その形ならば、「ちょっとフラメンコに興味がある」という人へのアピールも可能だろう。

手近なお店に入って一杯やりながらライブ配信を楽しむ。そんな鑑賞スタイルが現れても不思議ではない。またライブ配信を見て気になる踊り手さんがいたらオンラインでレッスンを受けてみる、そんなクラスの受け方も増えていくかもしれない。

そうしてネットを通じてフラメンコがより身近なものになった時、今、自粛を続けているタブラオやクラスも、今まで以上になくてはならない存在となる。ネット配信が増え、フラメンコに興味を持つ人、フラメンコに触れる人が増えれば、「生でフラメンコを観たい!」「先生に直に習いたい!」という人が増えるだろうからだ。

手軽に楽しめフラメンコの認知度を上げていくライブ配信、場所を問わず受けられるオンラインレッスン。本格的なフラメンコが楽しめ、その魅力を伝えるタブラオやクラス。ネットとリアルの融合が、コロナ終息後のフラメンコ界を、きっと大きく変えていくに違いない。

だからこそ「Flamenco2030」では、ネットにおけるフラメンコの可能性を模索し、試行錯誤すると同時に、タブラオやフラメンコクラスの活動再開もフォローしていきたい。

コロナ終息後のフラメンコ界の飛躍と拡大を目指して。

新しい時代を目指して。


フラメンコクラスの正常な再開、タブラオやライブ再開の際には、ぜひ情報のご提供をお願いいたします。「復興ニュース」として、当サイトにて告知させていただきます。クラスやライブの再開情報掲載ご希望の方は、必ず件名に「復興情報掲載希望」とご記入の上、flamenco2030@gmail.comまでお送りください。

復興ニュース担当/堀慎二郎

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